宗和税理士法人は、税務申告書の作成から、組織再編成、事業承継税務、税務に関するデューディリジェンスに至るまで、幅広いサービスを提供しています。
川北 博 著
定価:3,500円(税抜)
単行本: 407ページ
出版社: 日本公認会計士協会出版局
発売日: 2008/07
おすすめ度: 5つ星のうち
5.0
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民法改正 遺留分制度の見直し
平成30年7月に相続関係の民法の規定が大きく改正されました。今回は、見直しが行われた「遺留分制度」について、改正内容を紹介します。
1. 遺留分とは
兄弟姉妹以外の相続人について、その生活保障を図るなどの観点から、最低限の取り分を確保する制度です。例えば、相続人が配偶者と子2人のケースでは、配偶者の遺留分は全体の4分の1、子2人の遺留分はそれぞれ全体の8分の1となります。遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求を相手方に申し立てることができます。
2. 見直しの理由と改正の内容
(1)遺留分の金銭債権化
改正前の民法では、遺留分減殺請求を申し立てると、不動産や非上場株式などの事業用財産が共有状態となることも多
く、事業承継の支障となっているという指摘がありました。そこで、改正法では、遺留分返還方法について、遺留分減殺
請求という形ではなく、遺留分侵害額の請求(遺留分を侵害された額に見合う金銭を請求することができる権利)とするこ
ととされました。
(2)遺留分の算定方法の見直し
改正前の民法では、相続人に対する特別受益にあたる生前贈与について、期間の制限無しで遺留分の算定基礎財産に持
ち戻されることとされていました。改正法では、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限り遺留
分の算定基礎財産に含めることとされました。
3. 直ちに支払ができない場合
遺贈や贈与を受けた者が、遺留分侵害額に相当する金銭を直ちに準備することができない場合には,裁判所に対し,支払期限の猶予を求めることができます。
(出典)法務省「民法(相続法)改正 パンフレット」
4.相続税法の規定
〇相続税申告書の提出後に、遺留分侵害額の請求がなされ各人の取得額が確定した場合
① 遺留分侵害額の請求により取得財産が減少した者
相続税の更正の請求が認められています。(請求期限:金額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内)
② 遺留分侵害額の請求により取得財産が増加した者
相続税の修正申告ができることとされています。ちなみに、取得財産が減少した者が更正の請求をし、相続税の還付
を受けたにもかかわらず、取得財産が増加した者が修正申告などを行わず放置した場合には、税務署長が決定を行いま
す。
〇上記はいずれも民法改正前と同様の課税関係となっています。なぜなら、民法改正により、遺留分に関する規定が変化
したものの、権利行使によって生ずる担税力の増減は改正前と同様であると考えられるからです。相続税法の改正は、
民法条文の用語の改正に伴う規定の整備のみが行われています。
5.相続税の適用時期
上記4.の改正は、令和元年7月1日以後に開始する相続に係る相続税について適用されます。
<参考URL>
【法務省】民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html
【財務省】相続税法の改正
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/explanation/pdf/p0492-0509.pdf