宗和税理士法人は、税務申告書の作成から、組織再編成、事業承継税務、税務に関するデューディリジェンスに至るまで、幅広いサービスを提供しています。
川北 博 著
定価:3,500円(税抜)
単行本: 407ページ
出版社: 日本公認会計士協会出版局
発売日: 2008/07
おすすめ度: 5つ星のうち
5.0
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平成26年度税制改正大綱の概要と実務対応
平成25年12月12日、自民・公明の両党は平成26年度税制改正大綱を決定し12月24日に閣議決定しました。今回の税制改正大綱は、安倍政権の最重要課題と位置づけたデフレ脱却・日本経済再生のもと、「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を「三本の矢」として強力に推進し、景気回復の実感を広く行き渡らせるため、企業の積極的な投資行動を促すための措置、地域経済の活性化のための措置等に重点を置いた内容となっています。具体的には、企業については復興特別法人税の1年前倒し廃止、交際費等の損金不算入制度の見直し、国家戦略特区における設備投資等に対する減税措置等が行われます。個人については、高額の給与所得者の給与所得控除の縮減、ゴルフ会員権等の譲渡損失の損益通算廃止などの増税措置があるため注目すべき内容となっております。また、消費税の軽減税率は与党協議の結果により「税率10%時に導入する」ことで決着し、平成26年12月までに具体的に検討されることとなりました。
例年、税制改正大綱は年末において決定されますが、本年度は「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)に織り込まれている民間投資を活性化させるための税制措置等によって平成25年10月1日(民間投資活性化等のための税制改正大綱)付けで部分的に前倒し決定されています。こちらはバックナンバーを参照下さい。
http://www.sowatc.com/ホーム/2013-10-9/
今回は、平成26年度税制改正大綱の年末決定事項について、企業と個人に分けて、その概要と実務対応のポイントをまとめましたのでご参照下さい。
平成26年度税制改正大綱の全文は、以下の財務省HPからダウンロードできます。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/
【企業への税制措置】
項 目 |
内 容 |
実務上のポイント |
復興特別法人税の1年前倒し廃止 (減税措置) |
当初、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間内に最初に開始する年度から3年度間増税であったが、1年短縮され2年間の課税に変更となる。 |
●法人に適用。 ●既存の3月決算法人の場合は、平成25年4月1日から平成26年3月31日の年度で復興特別法人税の課税が終了する。 ●復興特別所得税について復興特別法人税の廃止後は所得税と合わせて法人税から控除等される。 |
交際費課税制度の延長と拡充 (減税措置) |
下記の見直しを行い適用期限を2年延長する。 ●資本金1億円超の大法人 飲食費(社内交際費を除く。)の50%の損金算入。 ●大法人による完全支配関係のない資本金1億円以下の中小法人 ①と②の選択適用 ①年間800万円まで全額損金算入 ②飲食費(社内交際費を除く。)の50%損金算入 |
●法人に適用。 ●1人当たり5,000円以下の少額交際費(社内交際費を除く。)の取扱いは存置。 ●中小法人については①の年間800万円まで全額損金算入を選択した場合、社内交際費もその範囲に含めることができるため②よりも有利な場合が多いと考えられる。ただし、役員や特殊関係使用人に係る給与認定に注意する必要あり。 |
国家戦略特区での設備投資の促進 (減税措置) |
国家戦略特区において機械等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除の制度を創設する。 ●特別償却 ○機械装置、開発研究用器具備品 ・中核事業用:即時償却 ・上記以外:取得価額の50% ○建物、付属設備、構築物 取得価額の25% ●特別税額控除 ○機械装置、開発研究用器具備品 取得価額の15% ○建物、付属設備、構築物 取得価額の8% |
●青色申告者(法人、個人事業者)に適用。 ●対象となる特定事業の具体的内容については政府における検討と併せて、与党の税制調査会においても引き続き検討される。 |
消費税簡易課税制度のみなし仕入率の引き下げ (増税措置) |
平成27年4月1日以後に開始する課税期間から以下の見直しを行う。 ●不動産業を第6種事業とし、みなし仕入率を40%(現行50%)とする。 ●金融業及び保険業を第5種事業とし、みなし仕入率を50%(現行60%)とする。 |
●法人、個人事業者に適用。 ●原則法(個別対応方式と一括比例配分方式)との比較シミュレーションの必要あり。 |
地方法人税の創設 |
平成26年10月1日以後の開始事業年度から地方法人税(国税)を創設する。法人税の納税義務者は各事業年度の基準法人税額(課税標準)に4.4%の税率を乗じて計算した地方法人税(国税)を国(税務署)申告納付しなければならない。 |
●地方法人税の創設に伴い、平成26年10月1日以後の開始年度から法人住民税法人税割、地方法人特別税、法人事業税の税率を改正する。 |
【個人への税制措置】
項 目 |
内 容 |
実務上のポイント |
給与所得控除の引き下げ (増税措置) |
給与所得控除の上限額の給与水準と控除額を以下のとおり引き下げる。 ●平成27年分まで 給与収入1,500万円超 → 控除額245万円 ●平成28年分より 給与水準1,200万円超 → 控除額230万円 ●平成29年分より 給与水準1,000万円超 → 控除額220万円 |
給与収入が給与所得控除算定の上限額を超える個人の方は、所得税のシミュレーションが望まれる。 |
同族会社が発行した社債に係る利息及び譲渡損益の課税方法の見直し (増税措置) |
同族会社が平成27年12年31日までに発行した社債について平成28年1月1日以降の取引については以下の取扱いとなる。 ●利息、償還金:総合課税 ●譲渡益:分離課税 (一般株式等20%) ●譲渡損:一般株式等の区分でのみ損益通算が可能) ※確定申告を要件とする上場株式等の譲渡損失、配当所得との損益通算は適用不可。 |
●特定公社債の対象となる「平成27年12月31日以前に発行された公社債」の範囲から同族会社が発行した社債が除外された。 ●利息は超過累進税率が分離課税20%税率を超えている場合の税率メリットが無くなり貸付金利息と同様の総合課税となる。 |
ゴルフ会員権等の譲渡損失の損益通算廃止 (増税措置) |
平成26年4月1日以降に行われたゴルフ会員権等の売却による譲渡損失は給与所得や不動産所得等との損益通算は適用不可。 |
利用頻度が減少しているなど売却処分の検討が必要な場合は早期に現在の相場を調査し対応が必要。 |
少額投資非課税制度(NISA)の口座開設等の柔軟化 (減税措置) |
1年単位でNISA口座を開設する金融機関の変更を認めるとともに、NISA口座を廃止した場合に翌年以降の再開設を認める。 |
該当する場合は非課税口座開設金融機関にて手続きを行う。 |
相続財産譲渡時の譲渡所得計算に係る取得費加算の見直し (増税措置) |
相続財産である土地等を譲渡した場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額をその者が相続した全ての土地等に対応する相続税相当額から、譲渡した土地等に対応する相続税額とする。 |
相続財産の譲渡に係る所得税の確定申告書の提出期限後に相続税額が確定した場合(相続税の期限内申告に限る。)には、相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2月以内に限り、所得税の更正の請求によりこの特例の適用を受けることができる。 |
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の創設 (減税措置) |
個人が持分の定めのある医療法人の持分を相続等により取得した場合に、その医療法人が認定医療法人(仮称)であるときは、一定の条件によりその認定医療法人の持分に対応する相続税等については移行計画(仮称)の期間満了まで納税を猶予し、移行期間内に持分の全てを放棄した場合には猶予税額を免除する。 |
●認定医療法人(仮称) 良質な医療を提供する大成の確立を図るため医療法等の一部を改正する法律に規定される移行計画(仮称)について、認定制度の施行の日から3年以内に厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいう。 ●贈与税についても類似の規定が創設される。 |
〈参考〉
Ⅰ.地方法人税(国税)の創設に伴う税率改正案
※現 行:平成26年9月30日までに開始する事業年度
改正案:平成26年10月1日以後に開始する事業年度