宗和税理士法人は、税務申告書の作成から、組織再編成、事業承継税務、税務に関するデューディリジェンスに至るまで、幅広いサービスを提供しています。
川北 博 著
定価:3,500円(税抜)
単行本: 407ページ
出版社: 日本公認会計士協会出版局
発売日: 2008/07
おすすめ度: 5つ星のうち
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消費税の税制改正について
平成23年6月に消費税法の一部が改正された項目について、実務上影響が大きいと思われる仕入税額控除制度における「95%ルール」適用について、概要と今後の対応について、ご説明します。
1.仕入税額控除制度における「95%ルール」の適用要件の見直しの概要
今までの制度においては課税売上割合が95%以上の場合には、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除することができることとされていました。
改正後におきましては、この制度の適用はその課税期間における課税売上割合が95%以上かつ課税売上高が5億円以下の事業者に限られることとなり、その課税期間の課税売上高が5億円超の場合、又は課税売上割合が95%未満の場合には、仕入控除税額の計算を個別対応方式もしくは一括比例配分方式のいずれかにより行うこととなります。
適用時期につきましては、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用になります。個人事業者は平成25年分から、事業年度が1年である法人については平成25年3月末決算分から適用されます。
2.個別対応方式について
個別対応方式は、その課税期間における個々の課税仕入れ等の全てについて、3つの区分(①課税売上対応分、②非課税売上対応分、③共通対応分)が明らかにされている場合に適用できる計算方法です。
なお、個別対応方式を採用する場合には、会計ソフトへの仕訳入力の際に、課税仕入を①課税売上のみに対応する課税仕入、②非課税売上のみに対応する課税仕入、③課税非課税に共通対応する課税仕入に区分し、それぞれの消費税コード(課税区分)を入力する必要があります。
3.一括比例配分方式について
一括比例配分方式は、個別対応方式を適用しない場合(課税期間における課税仕入れ等をその3つの区分が明らかにされていない場合)に適用する。又は、区分が明らかにされている場合であっても適用できる計算方法です。
4.個別対応方式、一括比例配分方式の選択適用について
一括比例配分方式を適用した事業者は、適用した課税期間の初日から同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間において、継続してこの一括比例配分方式を適用しなければならないこととされています。(法30⑤、基通11-2-21)
そのため、一括比例配分方式を適用した場合は、2年間の継続適用が義務付けられております。
ただし、仮決算による中間申告において一括比例配分方式を適用した場合でも、最終的な確定申告において個別対応方式を適用することは認められております。また、一括比例配分方式を継続適用しなければならない課税期間であっても、仮決算に基づく中間申告においては、個別対応方式によることも認められます(基通15-2-7)。
5.個別対応方式における課税売上対応分について
課税売上対応分とは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、次に掲げる課税仕入れ等がこれに該当します。(基通11-2-12)
①そのまま他に譲渡される課税資産
②課税資産の製造用にのみ消費し、又は使用される原材料、容器、包紙、機械及び装
置、工具、器具、備品等
③課税資産に係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料又は支払加工賃等
6.個別対応方式における非課税売上対応分について
非課税売上対応分とは、非課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、次に掲げる課税仕入れ等がこれに該当します。(基通11-2-15)
①販売用の土地の造成費用
②販売用の土地の取得に係る仲介手数料
③土地だけの譲渡に係る仲介手数料
④賃貸用住宅の建築費用
⑤住宅の賃貸に係る仲介手数料
⑥有価証券の売却時・購入時の売買手数料
7.個別対応方式における共通対応分について
共通対応分とは、原則として課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等がこれに該当します。
例えば、課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等がある場合に、それらに共通して使用される資産の取得費用や、消耗品費、電話料金、電気料金、ガス料金、水道料金等の課税仕入れ等がこれに該当します。
また、株件の発行に当たって印刷業者へ支払う印刷費、証券会社へ支払う引受手数料等のように資産の譲渡等に該当しない取引に要する課税仕入れ等は、共通対応分として区分することとなります(基通11-2-16)。
国税庁は、「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入税額控除の計算方法等に関するQ&Aを【基本的な考え方編】と【具体的事例編】の2編で公表しております。
詳細につきましては、こちらをご参照下さい。
その他の消費税関連の改正につきましては、平成24年4月1日以後、消費税の還付申告書を提出する場合、「消費税の還付申告に関する明細書」を添付しなければならないことと義務付けされております。
また、基準期間(事業年度の2期前)の課税売上高が1千万円以下である場合には、その事業年度において消費税は免税事業者となりますが、改正後におきましては、基準期間の課税売上高が1千万円以下の場合であっても、前事業年度の上期6ヶ月間(特定期間)の課税売上高が1千万円を超える場合は、その事業年度は課税事業者になります。
なお、課税売上高に代えて、特定期間の給与等支払額の合計額を用いて判定することもできます。
詳細な内容につきましては、当税理士法人の担当者にお問い合わせください。