宗和税理士法人は、税務申告書の作成から、組織再編成、事業承継税務、税務に関するデューディリジェンスに至るまで、幅広いサービスを提供しています。
川北 博 著
定価:3,500円(税抜)
単行本: 407ページ
出版社: 日本公認会計士協会出版局
発売日: 2008/07
おすすめ度: 5つ星のうち
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過年度遡及会計基準に係る税務処理
国税庁は、過年度遡及会計基準に係る税務処理についてQ&A『法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について』を公表しました。
1) はじめに~過年度遡及とは…会計上の取扱い~
IFRS(国際財務報告基準)や米国会計基準では、会計方針の変更を行った場合や、財務諸表の表示方法を変更した場合には、過去の財務諸表を新たに採用した方法で遡及処理することが求められております。わが国にでもこれにならい、平成21年12月4日に企業会計基準委員会から「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(過年度遡及会計基準)及び「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(過年度遡及会計適用指針)が公表されました。
その結果、ある会計期間に、
①会計方針や表示方法の変更を行った場合には、過去の財務諸表にも遡及適用し、又は財務諸表を組み替える
②過去の誤謬を発見した場合には、財務諸表を修正再表示する
といった会計処理や表示の変更等を行うこととなりました。
遡及処理をして、同一の会計方針や表示方法による財務諸表の期間比較を可能にしようというわけです。
この過年度遡及会計基準は平成23年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用することになりました。
会計方針の変更に基づく遡及適用及び過去の誤謬の訂正に基づく修正再表示が行われた場合には、過年度の期間に関する累積的影響額を、表示する財務諸表のうち最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映することとされています(「最も古い期間」とは会社法では当期となり、金融商品取引法では前期となります)。
なお、Q&Aでは次の変更例を示しておりますのでご参照ください。
・棚卸資産の評価方法の変更
・売上計上基準の変更(出荷基準から検収基準への変更又はその逆)
・過去の誤謬の訂正例
・確定申告書の添付書類、他
2) 遡及修正による法人税の税務処理に与える影響は?
過年度遡及会計基準に基づく遡及処理は過去に確定した決算を修正するものではなく、仮に遡及処理が行われた場合でも、例えば、過年度の売上計上漏れなどがあった場合のように、その過年度の確定申告において誤った課税所得の計算を行っていたのでない限り、過年度の法人税の課税所得の金額や税額に対して影響を及ぼすことはないとされています。 ただし、利益剰余金の前期末残高と当期首残高が不一致となるため、当期の法人税申告書別表において調整を行う必要があります。